指しゃぶりつめかみなどの癖
噛み合わせの問題が、姿勢の悪さ、体の歪みを作り出し、それが健康を損ねる、というお話を前回いたしました。
さて、噛み合わせを悪くする、つまり顎ずれを起こす原因ですが、これははすでに乳幼児期から始まります。
まず、健康を維持していく上で口腔が持つ重要な要素として、舌の正常な発育が不可欠です。赤ちゃんが舌を上手に使ってお母さんのおっぱいを吸う、という行為から始まり、離乳してからは、咀嚼し飲み込むという舌の正常な機能の中で、口唇や顎の筋肉、顎骨がバランスよく育っていくのです。そして歯列が完成したあとは、これを乱す原因として、虫歯や、早期に欠損するなど直接の原因の他に外側からの力が大きく影響します。指しゃぶり、爪噛み、口唇を吸う、などの癖。またうつぶせ寝など、長時間顎と歯列に力がかかり続けるような癖も問題です。
影響が大きいほおづえ
学童期からは、頬杖をつく子供が急増します。それも常に同じパターンで行っていることが多いので、成長期にある顎は持続的に直接押される行為によって誘導され、ずれていきます。
この時同時に歯列は外側からの力で内側に倒れ、歯列は狭く乱れ、顎は後ろにずれ、動きも悪くなります。そして舌の動く部屋も狭くなり、窮屈になった舌は大変なストレスを受けます。その結果、舌がのどに落ち易くなり、気道が狭くなり、酸素不足を引き起こすと考えられます。口の正常な筋肉バランスの崩れは口呼吸を生み、きちんと口を閉じることが出来なくなるばかりでなく、正常な鼻呼吸をしない状況、つまり雑菌のろ過装置を通らないままの空気を身体の中に入れることになります。加えて酸素不足が直接身体の免疫機構を狂わせ、更に顎のずれは身体の歪みにつながり、様々な病気の元を作り出す、という悪循環に陥っていきます。
大切な舌の働き
何気なく存在している舌ですが、人間だけがなぜ喋れるのか、言語人類学によれば、2足歩行によって立ち上がった人間は、喉頭(のどぼとけ)の位置が下がり、のどから口までの距離が長くなって肺から出る空気を加工し声にするという複雑な装置が可能になり、大きく長い筋肉である舌を使って発語することが出来るようになったということです。
ともかく、人は舌を使って、絶え間なく喋り、1分間に最低2回はつばを飲み、食物を飲み込むという作業を行なうのですから、舌が自由に動けないというストレスは想像以上のものと考えられます。
舌が正常に機能できないと判断されたときには、悪習慣を止め、歯列矯正などで口腔の環境を整え舌の訓練を行なうことで解決します。
最近のこどもたちは、体型だけは大きくなったけど、体力・知力・視力すべて低下し、朝が苦手、地べたに座る、すぐに切れるなど、どうも元気がない。と言われることと姿勢の悪さは無関係ではない気がします。