今日は少し専門的な話になるが、成長期の子供さんのあごのずれに対する注意を話したいと思う。おとなになって苦労されている多くの患者さんを診ているうちに、そのずれが、ちょうど歯の抜け変わる小学校低学年でおき始めている事が多いことが判明したからである。なるべく早く対応することは大変重要なことなので、その1例をあげてみる。
小学校1年のK君
前歯の反対咬合(受け口)をLAにて治療後、上顎2番{前から2番目の上の歯)が舌側(内側)に萌出、右側片側のみcross biteになった。(2番目の歯だけが上下のかみ合わせが反対になった)
歯冠幅径(歯の大きさ)が大きく、将来叢生(デコボコ)になることも予想されるため、側方歯群の萌出を待って(奥歯がはえてくるのを待って)、フルマウスの叢生治療に移行する必要が考えられた(口全体の矯正治療が必要になりそうであった)。あるいはフェイスマスクによる、上顎の前方成長を促進させる必要も考えられた。
しかし、cross bite(部分的な反対咬合)により、下顎位が異常方向へ誘導される懸念があり、成長期における下顎位の正常発育は重要なポイントであるため、下顎にバイトプレートを装着しタッピング運動により調整したところ、下顎位が変化した。このプレートを咬合挙上板として使用しながら、早期に右側2番の叢生をLAにより改善することとした。
結果、正中線は一致し、前側方に偏位していた下顎は、正常な位置に誘導されたと考えられる。
特に上の前歯の叢生を早期に治療する意味は、正常な下顎位を誘導するファクターとなる場合が多いので、大切なポイントだと思う。治療期間をいたずらに長期化する必要はないが、常に下顎位を考慮に入れて矯正治療へきめ細かに対応する必要性を改めて実感した一例である。
成長期に、この様な問題が解決されていたら、あごずれの問題は起きなかっただろうと思う例に、しばしば遭遇する。子供さんたちの歯科治療や検診に関わる歯科医の責任はとても大きいのである
心して観ていってあげて欲しいと願うばかりである